レベルが高い学校に通うと子どもの学力が下がる⁉︎成績低下を防ぐために親が心がけたいこと

はじめに

つくばには、非常にレベルが高い、勉強ができる子が多い公立小中学校がいくつかあります。

その中でも異常にレベルが高い学校がいくつかあり、3年生100名あたり16名が茨城県最難関の土浦第一高校に合格している中学校もあります。(詳しくはこちらの記事をご覧ください。)

我が子も、優秀な児童や生徒とともに学び切磋琢磨してほしいと考える保護者も少なくないでしょう。

しかしながら、周囲の平均的な学力が高い環境で学ぶことは、場合によっては本人の成績が下がる結果につながることも最近の研究で明らかになっています。

この記事では、レベルが高い学校を検討する保護者の方に心がけると良いと思われることをお伝えしていきます。

※以下では中室先生らの研究を引用させていただきます。出典の詳細は最後に記載しています。

レベルが高い学校に通うと学力が上がるのか?

「学力の経済学」の著者である教育経済学者の中室牧子先生(慶應義塾大学)によると、ある個人が周囲の人々から受ける影響のことを「ピア効果」(Peer effect)と言います。

学力のピア効果とは、ある生徒が周囲の生徒の平均的な学力からの影響を受けているのではないかとの仮説です。

海外の研究では、ピア効果は正でかつ、非常に大きいことを示している研究があるそうです。

正のピア効果とは、周囲の生徒の平均的な学力が高いことによって、自分の子ども学力も上がるという効果であり、レベルが高い学校に所属するメリットと言えます。

他方で、下記のようにも述べられ、日本では正のピア効果を示す統一的な見解が得られていないようです。

実際には、このピア効果がプラスであるか、マイナスであるか、あるいはピア効果そのものがほとんど存在しないのかについては、さまざまな結果が混在しており、特に日本のデータを用いた実証研究の結果についてはコンセンサスが得られている状況にはない。

そこで中室先生らは、埼玉県の公立小中学校の生徒の2015・2016年度の学力調査結果のデータからピア効果の推定を試みました。

すると、驚きの結果が示唆されました。

周囲の学力が高いと本人の成績が下がる?

上述の調査の結果、負のピア効果が存在することが示唆されました。

これは、クラスメイトの成績が高いクラスだと、本人の成績は下がるということを意味しています。

これについて、中室先生らは、以下のように述べています。

負のピア効果の理由として、成績のよい同級生がいることによって、自分の相対的な学力が低いという自己認識を持ち、学習意欲が低下するという可能性が指摘できる。教育の期待収益率を高めるためには、自分の潜在的な能力が低いという自己認識を持たせないような関わりや指導を行うことが重要と考えられる。

学力が高い子どもが多い学校に通うときに気をつけるとよいこと

中室先生らの研究結果から、次のようにまとめられます。

周りの生徒の平均的な学力が高い学校に通う場合、相対的に学力が低く感じられたり順位が悪くなったりすることがあります。

そんなとき、自分は勉強ができないという認識を持ったり、自分の能力が低いという認識を持ったりすると、学習意欲が低下することがあります。

保護者は、他の子どもと比べるのではなく、その子の中でのがんばりや成長を認めて、肯定的に励まし、自己肯定感を保てるよう関わっていくことが必要です。

そうでないと、子どもが自信ややる気をなくしてしまい、かえって学力が下がる可能性があります。

まとめ

周囲の平均的な学力が高い学校に通うと、自分の子どもの学力が上がるかどうかについては、教育経済学において統一的な見解はまだ得られていない状況です。

海外の研究結果では、正のピア効果、すなわち、周りのレベルが高ければ、自分の子どもの学力も上がることを示すものが多数あります。

日本の最近の研究結果では、場合によっては負のピア効果、すなわち、周りのレベルが高ければ自分の子どもの学力が下がることがあることが示されています。

これらから、レベルの高い学校に自分の子どもが通う場合は、周りの子どもと比較せず、子どもが自己効力感や自信を維持できるように関わることが重要だと分かりました。

※この記事は、外山理沙子・伊藤寛武・田端紳・石川善樹・中室牧子「負のピア効果 ―クラスメイトの学力が高くなると生徒の学力は下がるのか?―」RIETI Discussion Paper Series 17-J-024から引用し、また参考にさせていただきました。